三田村家

伝承から創新ヘ

「同じものを作ってはいけない。」常々、祖父が語っていた言葉です。時代も人も違うので、自分の個性あるものを探しなさいと言われて育ってきました。もちろん素材と技法は同じなのですが、基礎的なこと以外は自分で学び、さまざまなことに挑戦して育ちました。

私が生まれた杉並区の家には漆の木が二本あり、夏になると木に交互に傷をつけては漆液を集めていました。その液を大事に使っている姿は、天然のものを永遠の美に変える魔術師のようであったのです。庭にあった瓢箪、橙などは軒下に吊るされて、何十年かすると作品の一部になり、糸瓜からは水を取り、梔子の実は煎じ、漆に入れて調合をしていました。

小学校の2年の時に桐の木を渡され、彫刻刀で彫り、漆を吸わせて、香合を作りました。てんとう虫の厚貝象嵌をしました。これが私の最初の漆での作品作りです。

祖父も父も毎日家で制作をしていました。下図を考えている時、造形をしている時、塗っている時、蒔絵をしている時その時々でお細工場と呼んでいた仕事場の様子が違うことも興味がありました。私にはその全ての時が面白く見えたのです。

祖父は日本画の線描から、父は洋画の表現からこの道に入りましたので、二人は全く違う世界を模索してきました。そしてそれぞれが個性ある技法を開発し、作品として発表をしています。私も自分なりの世界観を完成させるように努力を重ねています。

私の子供たちには、幼少期から漆の作品作りを体験させてきました。その頃の作品が残っていますので、今は孫たちにも同じ経験をさせています。

その後長男は木彫を学んでから、次男は金属工芸から漆の道に入り、それぞれ個性ある作品を発表し始めています。

漆はどのように魅力的な世界を作ることができるかを家族一同で創り上げていきたいと思っています。

三田村 有純

作家紹介

三田村 自芳 MITAMURA Jihou

本名 : 芳蔵 名:自芳
1886年生~1979年没江戸蒔絵赤塚派8代
親戚に当たる7代赤塚自得の下で13歳から蒔絵を学ぶ
小林徳二郎に洋画、在原古玩、川合玉堂に日本画を師事
赤塚自得塾塾頭・師範代を経て独立
日本漆芸院会長、日展審査呉、新綜工芸会相談役和ヘ日本工芸会創立時正会員


菊花の宴

三田村 秀芳 MITAMURA Syuhou

本名:秀雄銘:秀雄、宗漆庵秀芳、秀芳
1913年生~1982年没自芳長男江戸蒔絵赤塚派9代
三田村自芳門下として蒔絵を習得、荻野康児に泊画を学ぶ
独自の金地高蒔絵などを用い日展等に出品
東京府総合工芸展覧会、日本美術協会展、新綜工芸会等で受賞 二芸団体工彩会委員長、新綜工芸会委員長を歴任


豆花

三田村 有純 MITAMURA Arisumi

1949 年生秀芳長男江戸蒔絵赤塚派10代
8代祖父自芳、9代父秀芳より蒔絵を学ぶ
東京藝術大学大学院漆芸専攻修了
田口善国の研究生、忘橋節郎の研究生を経て同大学勤務
ベルギー三立美箭学院に籍を置き欧州にて漆の研究調査
2018年第74回日本藝術院賞受賞
現在束京藝術大学名誉教授、日展理事


月の光 その先に

三田村 雨龍 MITAMURA Uryu

木名:貞秀銘:貞、雨龍
1982年生有純長男
欧州11力国の美術館・博物館にて有純と1年間研修
岩手具安代町立漆器研修所卒業
冨山県井波木彫刻二芸高等職業訓練校卒業
第74回二紀展彫刻優賞受賞
現在木漆工房雨龍主宰、二紀会準会員


黄金馬鈴著芽出る

三田村 有芳 MITAMURA Ariyoshi

1985年生 有純次男
中国清華大学美術学院卒業・修士修了(金属工芸)
同博土課程修了(輸出漆芸史研究・作品制作発表)
日展入選5回、第59回日本現代工芸美術展現代工芸賞受賞
現在芸術学博土、京都芸術大学大学院准教授
(株)藝祥代表取締役社長、現代工芸美術家協会会貝


生命の果実一平安果一